講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見12』

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見12 男と女――青春・恋愛』講談社文芸文庫、2003年6月
第12巻は、再び「恋愛」がテーマ。この巻もよい短篇が多い。向田邦子の短篇を初めて読んだけど、これがとても素晴らしい。

  • 野間宏「二つの肉体」…△、平凡。
  • 石坂洋次郎「草を刈る娘 ある山麓の素描」…○、素朴な、自然と一体となった生活。
  • 川崎長太郎「夜の家にて」…○、年老いていくこと。
  • 原田康子「サビタの記憶」…○、ありふれた言い方をするなら、少女から大人への通過点の記憶。
  • 福田章二「蝶をちぎった男の話」…○、美と残酷というロマン主義
  • 三浦哲郎「初夜」…△、ちょっと気恥ずかしい。
  • 川端康成「木の上」…○、子どもだけの「秘密」の場所。
  • 唐十郎「恋のアマリリス」…○、タイトルには引いてしまうが、中身は傑作。
  • 向田邦子「花の名前」…◎、これも傑作。妻が夫に、物の名前を教える。はじめは夫に感謝される。だが、やがてそれが何だって言うのだ…と夫の背中は答えるだろう。
  • 水上勉「箒川」…○、貧しかった青春時代。その時作家は、忘れられない人と出会う。40年ほど過ぎ、作家は偶然にもその女性の行方を知ることができた。
  • 三木卓「ボトル」…○、「美」を前にして、心をすっかり奪われてしまう人たち。

戦後短篇小説再発見 12 (講談社文芸文庫)

戦後短篇小説再発見 12 (講談社文芸文庫)