アレクサンドル・ソクーロフ『ファザー、サン』

◆『ファザー、サン』監督/アレクサンドル・ソクーロフ/2003年/ドイツ・ロシア・イタリア・オランダ/84分
タイトル通り、父と息子の物語のはずなのだか、映画の冒頭からなんだかあやしい雰囲気。荒い息づかいが聞こえ、やがて人の肌がクローズアップされた画面が写しだされる。次第にカメラの焦点が合い、画面がはっきりしてくると、上半身が裸の男性二人が抱き合って寝ている。会話から二人は親子であることが分かる。――
こんな感じで映画は始まる。少しセピアがかった色合いの画面に映し出される男性の膚が妙な美しさがある。筋肉がありがっしりした身体のわりに、膚がきれいで女性的に見えるのが幻想性を高める。また、映画全体は絶えず何かの音や音楽がかかっている。それはノイズまじりのラジオの音であったり、音楽であったり。そして、ときおり登場人物の話す声にかすかにエコーがかかっているように聞こえた。これらの要素も映画の世界を非現実的な世界へ導く。
こうした世界で描かれる、父と息子の関係。冒頭場面でも分かるように、どこか壊れそうで、非常に繊細なタッチで描かれている。しかし残念ながら、私にはこの親子が何を表しているのか、今のところよく分からない。かなり難解な映画だった。