梅田望夫『ウェブ進化論』

梅田望夫ウェブ進化論――本当の大変化はこれから始まる』ちくま新書、2006年2月
話題の本ということなので、興味本位で読み始めたが、これが非常に面白い。知的な刺激に富んだ一冊である。
この本を読むまで、なんとなく「ウェブ」や本書で言われる「オープンソース現象」というものを信用していなかった。「「そんなコンテンツなんて大半はクズである」という権威側からよく聞かれる典型的な言葉」(p.147)に肩入れしていたのであるが、本書を読み進むに連れて、そうとばかり言っていられないと思うようになった。たしかに、「いまや「玉」のほうと向き合わざるを得なくなった」(p.147)というのも納得できる。「石」の部分ばかりみて、ウェブの世界の可能性を貶めていても仕方がないのではないか。その意味で、本書で提示されている「総表現社会チープ革命×検索エンジン×自動秩序形成システム」(p.153)という方程式に興味を持った。
話は逸れるが、私は最近、「より良い社会」の構想や設計が可能なのかということに興味がある。特に、社会主義の失敗を目の当たりにした現代において、それでも「より良い社会」を構想するとすれば、どのような方法があるのだろうかと。
そのようなわけで、先ほどの方程式は興味深いし、「不特定多数無限大への信頼」に関する話など参考になった。「不特定多数の参加」は悪だ、衆愚だと思考停止してはならない。思考をその先に進める必要があるのだ。

 日本だけでも数千万、世界全体で見れば数億から一〇億以上という不特定多数の厖大さ、それゆえの「数の論理」、それらを集約するためのテクノロジーの進化の加速やコスト低下、そういう諸々の要因を冷静に見つめ、「不特定多数の集約」という新しい「力の芽」の成長を凝視し、その社会的な意味を、私たちは考えていかなければならないのだ。(p.207)

それから、ブログは知的生産のツールであるという意見を紹介している箇所があって、そうなのかもしれないなと思った。しかしながら、私自身、このブログを書き続けて、どれほど成長したのだろうか。
また、ブログは「己の能力と生き様がそのままプレゼンテーションの装置として機能する」「記事を書き続けることで人との繋がりも生まれていく」という意見も紹介されていた。それならば、私のこのブログも「プレゼンテーションの装置」として機能しないかなあと、儚い望みを抱いてみたり。私の就職活動に、このブログが役立つことがあるのだろうか。――

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)