大澤真幸『ナショナリズムの由来』

大澤真幸ナショナリズムの由来』講談社、2007年6月
800ページを超える大著で、持って読むのがとてもつらい本であった。しかも、つらいのは本の重さだけでなく、その内容もである。
本書は、はっきり言えば、著者の読書ノートあるいはお勉強ノートといったもので、著者が読んだ本の内容をまとめ、感想をつけただけのもの。そして、最後はお得意の「第三者の審級」に結びつけるという、いつもパターンである。この内容で、800ページも必要ない。
読んで面白い箇所はたしかにあるのだが、それが実は別の本の内容だった、ということが何度もある。読みながら、何度がっかりしたことか。『ナショナリズムの由来』というタイトルなのだが、本書はナショナリズムのテーマと本当に関係があるのか、はなはだ疑問だ。著者には、一度「第三者の審級」というマジックワードを使わずに本を書いてもらいたいものである。