講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見11』

講談社文芸文庫編『戦後短篇小説再発見11 事件の深層』講談社文芸文庫、2003年6月
第11巻は、「事件の深層」ということで犯罪にまつわる小説が集められた。この巻は、読み応えのある小説が多い。

  • 武田泰淳「空間の犯罪」…○、上から下を見下ろす視線。
  • 松本清張「火の記憶」…○、清張らしい物語。
  • 三島由紀夫「復讐」…○、家族がほっと胸をなでおろしたときに、その雰囲気に水を差すような最後の一言がよい。
  • 椎名麟三「寒暖計」…○、これは現代風に言うならば、ロリコン小説の一つ。
  • 倉橋由美子「夏の終り」…○、恋人を共同所有する姉妹。
  • 大岡昇平「焚火」…○、松本清張の作品も「火」の記憶が重要なモチーフになっていたけれど、この作品も「火」が主人公の運命を決定づけている。「火」の反復。
  • 野坂昭如童女入水」…◎、この巻でもっとも優れている作品ではないだろうか。独特の語りが、小説を「物語」へと昇華させる。
  • 中上健次「ふたかみ」…◎、こちらも野坂昭如に負けず劣らずの物語。谷崎の『春琴抄』に対する中上の答え。
  • 宮本輝「紫頭巾」…○、在日関連の小説。
  • 藤沢周「ナンブ式」…△、男と拳銃といえば…。

戦後短篇小説再発見 11 (講談社文芸文庫)

戦後短篇小説再発見 11 (講談社文芸文庫)