長谷正人『悪循環の現象学――「行為の意図せざる結果」をめぐって』

◆長谷正人『悪循環の現象学――「行為の意図せざる結果」をめぐって』ハーベスト社
すごく面白い。テーマは、副題にある通り「行為の意図せざる結果」に関する社会学的考察だ。要するに、ある意図を持ってした行為が、その意図とは異なる結果が生じ、それを回避したいと思うが同様な事態を反復し悪循環に陥ってしまうという現象を分析したものである。
言い換えれば、自己言及性のパラドックス、あるいはダブル・バインド論に近い。
この悪循環の構図が、近代社会そのものなのだと論じたところが面白い。近代はある意味「不器用な」社会であるという。独創的だと思った言い回しが、実は紋切り型の表現であったということはよくあることだ。これは、近代の問題で、独創的であろうとすればするほど、紋切り型の陥ってしまうという悪循環がある。では、この悪循環を断ち切るにはどうしたらよいのか。答えは、このような紋切り型を、「不器用」さを徹底的に肯定するしかない。あのフロベールの『紋切り型辞典』のように…。