石原千秋『国語教科書の思想』
◆石原千秋『国語教科書の思想』ちくま新書、2005年10月
「国語教科書」をテクストとして捉え、そこにいかなる思想が流れているのかを「批評」する試み。「言説分析」「構造分析」と呼ばれる手法から、国語教科書が批評される。このようにして、教科書に収録される教材の作者や教科書の作り手の意図と具体的な表現を切り離し、意図しなかったかもしれない「無意識」をあぶり出す。入試問題を論じた一連の本も面白かったが、本書も刺激的な内容となっている。
興味深いものに、教科書には「擬人法」を用いた教材が多いということだ。多くの教材では動物が擬人化され、子どもが感情移入しやすいように書かれているという。(p.79)動物のオンパレードという異様さ。子どもは擬人化された動物にしか感情移入できないとでも思っているのかとツッコミを入れているのだが、教科書がこのように擬人化という手法を使った作品を多用している点は興味深い。
この指摘をもとにかなり穿った見方をするなら、もしかして国語教科書は動物やモノを擬人化して、それに感情移入させることを子どもたちに身につけさせようとしているのだろうか。そして、この方法を身につけた子どもたちの一部がやがて「オタク」となって「萌え」などと呼ばれるものに繋がっていったのかもしれない。「萌え」を生んだのはほかでもない、「国語教育」それだったのではないか――。
- 作者: 石原千秋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/10/04
- メディア: 新書
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