野村芳太郎『どんと行こうぜ』
◆『どんと行こうぜ』監督:野村芳太郎/1959年/松竹/90分
脚本を野村芳太郎と大島渚が書いている。大島渚というと、つい政治的な色彩の濃い映画をイメージしてしまうのだが、この映画は大学生を主人公にしたコメディで、かなり面白い内容だった。
大学の放送研究会で、現代学生の経済生活をレポートしていた梨花は、ある日、三郎にインタビューをする。すると三郎は、アルバイトなんて無駄だ、浪費だと言い、梨花たちをからかう。しかし、三郎はお金儲けをしようと、日夜、仲間とバイトに明け暮れていた。こうして出会った二人が、さまざまな出来事を通じて、恋愛関係に至るまでを描く。
この映画の主題の一つとして「二」という関係が挙げられるのではないか。恋愛コメディという観点から見れば、カップルの成立が物語の最終的な目的となる。すなわち「二」が「一」になる物語だと言えよう。映画の後半で、三郎たちの働くバーの支配人が男女交際を禁じたことから、三郎をリーダーにストライキが始まり、「二」という関係をめぐる闘いが繰り広げられることになるだろう。
「二」は、もちろん映像的にも興味深い。梨花と三郎が多摩川に行く場面がある。橋の下で梨花と三郎がいて、橋の上には久子と久利のカップルがいる。ちょうど画面の真ん中が橋によって区切られ、画面の上下で二つのカップルが同時に同じ行為をする場面は、面白かった。一つの画面を二つに分ける手法は、ラストシーンでも用いられていた。橋の場面では、三郎は梨花と、久利は久子と喧嘩して別れてしまう。「二」が別れてカップルの成立にならないが、ラストシーンでは三郎の写っている画面と梨花の写っている画面が一緒になることによって、物語的にも映像的にもカップルを成立させている。男と女という「二」が、カップルとなり「一」となる物語は、こうして幕を閉じるわけだ。