吉村公三郎『夜の蝶』

◆『夜の蝶』監督:吉村公三郎/1957年/大映/90分/カラー
脚本を田中澄江が書き、撮影を宮川一夫が担当。出演は、船越英二京マチ子山本富士子。夜の銀座を舞台にした女の争いを描いた映画といえば、成瀬巳喜男にも『女が階段を上る時』という名作がある。1950年代には、このような映画がけっこう作られていたのだろうか。
この映画も『女が階段を上る時』と同様に素晴らしい作品。京マチ子山本富士子の女の争いに見応えがある。京マチ子のプライド、山本富士子の純情さとしたたかさ。この女の争いと同時平行に男の世界の争いも描かれる。関西のデパートの東京進出を阻止しようとする政治的駆け引きがそれだ。こうして男も女も、夜の銀座で生き抜いていく。そして、この世界をシニカルに見つめている男を船越英二が演じている。こういう人物を設定しておいたことは、この物語にとってはとても良い効果を生んだと思う。物語に厚みが出ている。田中澄江の脚本が良かったのかもしれない。