関口すみ子『御一新とジェンダー』

関口すみ子『御一新とジェンダー 荻生徂徠から教育勅語まで』東京大学出版会、2005年3月
荻生徂徠から教育勅語」とあるように、かなり広い範囲にわたって、多くの資料を分析しているので、近世史や政治思想史の素人の私には、読むのに相当苦労した。しかしながら、女性と政治をめぐる興味深い一冊である。
本書は、「「女権」をめぐる男たちのうめきと凱歌を追った江戸から明治への旅」(p.331)だという。
武家は権威を得るために、大奥という権力の中枢に公家の女性を入れるのだが、これが男たち(政治の領域)に厄介な問題を引き起こす。武家の文化に公家の文化が浸透してくるし、大奥をめぐるスキャンダルは将軍家の権威をじわじわと崩されていく。つまり、政治の世界に口出しをする女たちに、男たちは手を焼いていたというわけだ。
こうした男たちの「うめき」は、「御一新」をきっかけにして、政治の領域から女を徹底的に排除した。女はあくまで夫(男)を支える「賢母良妻」へと導かれていくだろう。「江戸の儒者の模索と苦闘は、近代日本の建設にも活かされたとも言える」(p.330)と著者は述べている。「西洋の衝撃」と江戸時代以来の男たちの「うめき」が、日本の近代を整備していったという点が面白い。