柄谷行人『探究Ⅰ』
◆柄谷行人『探究Ⅰ』講談社学術文庫、1992年3月
この本は、要するに《他者》論なのだが、それ以上でもそれ以下でもない。純粋に《他者》論。それしか感想が思いつかない。柄谷行人の著作のなかでも、けっこう取り上げられたり言及されることが多い本だけど、「難しいだろうなあ」と思って、これまでずっと読むのを避けてきた。そんな本なので、読み終えてみて、ちょっと期待はずれでがっかり。
他者論ではなく《他者》論。ここでの《他者》とは、何も共有するものがないということだ。同じ土俵上で、いくら激論を交わしても、それは「対話」とは言わない。それは独我論なのだという。「対話」とは、何も共有していない《他者》とのコミュニケーションであると。
(柄谷が言う)独我論や共同体批判として、この《他者》という概念は有効なのだろうけど、それにしてもこの《他者》と「私」は出会ったとして、いったい何を語ればよいのだろう?。そんなことが気になってしまう。自分自身の根底にあるものを突き崩す作業として、自分とは異なる土台に立つ《他者》とのコミュニケーションというのは分かりやすい。自明だと思いこんでいたものが、《他者》との出会いによって、カッコに入れられてしまう。おそらく、ここから思考があるいは批評が始まるのだろう。その意味で、柄谷にとって《他者》という概念がいかに重要であるかは、本書を読んでよく分かったのだけど。ああ、やっぱり物足りない。

- 作者: 柄谷行人
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/03/05
- メディア: 文庫
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