仲正昌樹『日本とドイツ 二つの戦後思想』

仲正昌樹『日本とドイツ 二つの戦後思想』光文社新書、2005年7月
良い本だった。日本とドイツということで、戦争の問題が中心となるのかと予想していたけど、話題は「戦争責任」の話だけではなく、国家論や、マルクス主義や左翼、ポストモダンへと広がっていく。これは、日本とドイツにおける「戦後の思想空間」(大澤真幸)を論じている本だと言える。新書という性格上、各思想家について深く論じられることはないが、戦後の思想を整理し簡潔に紹介している。教科書のように使える本だ。仲正氏は、現代思想の整理が上手い。
憲法」と「国のかたち」を論じている箇所で、面白い指摘を見つける。日本は、戦後一貫して「国民国家」の枠が維持されてきたので、国民のアイデンティティが「憲法」との関連で論じられることがほとんど無かったという。

戦前からの伝統の延長上にある「国民国家」ではなくて、「憲法」のみをアイデンティティの基礎にしようとするような議論は、日本ではあまりリアリティがない。(p.118)

ここは、なるほどなと思ってメモした。本書では、大塚英志の名前は出てこなかった。なんでだろう。取るに足らないということなのだろうか。

日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)

日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)