アンドリュー・アダムソン『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女』
◆『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女(日本語吹替版)』監督:アンドリュー・アダムソン/2005年/アメリカ/140分
以前、原作を読んで、その物語の面白さに目覚め、映画版を見るのを楽しみにしていた。ようやく見ることができたが、期待以上に面白い映画に仕上がっていた。
この映画は、どうやら冒頭場面にすべてを集約しているようだ。映画の冒頭は、ロンドンが空襲に遭っている場面で、主人公の家族が避難するところから物語が始まっている。空襲のイメージが、映画の後半になって活かされている。ここではまた弟エドの性格(自己中心的)が示され、同時に兄ピーターとの葛藤も示されている。そこで、エドに注目してみると、この映画は、エドが自分のわがままからとんでもない事態を引き起こしてしまい、さまざまな試練を乗り越え、自己中心的な言動を克服し、正義王へと成長する物語であると言えそう。もちろん、他の登場人物に注目すれば別の物語になるし、そこが『ナルニア国物語』の一番の魅力だと思うのだが(たとえば長男ピーターに関して言えば、突然ナルニアの存亡を賭けた戦いに巻きこまれ、戦いに参加すべきか拒否すべきかの葛藤が生じるところは、サブカルチャー論的に興味深い)、今回、私は特にエドが一番気になってしまうのであった。