北野圭介『日本映画はアメリカでどう観られてきたか』

◆北野圭介『日本映画はアメリカでどう観られてきたか』平凡社新書、2005年8月
タイトルから予想できるように、アメリカにおける日本映画の語られかた、つまり日本映画をめぐる言説分析をした本である。となると、おきまりのパターン(アメリカ批判、オリエンタリズム批判)などが思い浮かんでしまうが、本書はもうそのようなパターンでは終わらない。もちろん、文化論ではありがちなこうした批判がまったく無駄だとは私も思わないが、そろそろ次の段階へ進む必要があるのではないかと思う。そういうわけで、たとえば本書で述べられている「九〇年代の日本における映画研究は文化研究において国内的な視点で事足れるナショナリズム批判の枠組みが多用されたわけですが(略)」(p.171)という言葉には共感した。そして、文化論はこのことを反省し、乗り越えていかねばならないと思う。
本書は、ちょっとした映画学入門としても参考になると思う。

日本映画はアメリカでどう観られてきたか (平凡社新書)

日本映画はアメリカでどう観られてきたか (平凡社新書)