野村芳太郎『背徳のメス』

◆『背徳のメス』監督:野村芳太郎/原作:黒岩重吾/1961年/松竹/87分
この映画は、男の理不尽さが女を抑圧する物語と言える。毎夜、女性と遊び回っている医者の植(うえ)は、病院の創立パーティーの夜、酔って寝ていたところガス漏れのために、あやうく命を落としそうになる。植は、これは自分の過失ではなく、誰かによって殺されかけたのだと思い、犯人を捜し始める。女性関係や上司との間にトラブルを抱えていた植には、たしかに誰かに恨まれていても仕方がなかった。だが、犯人は意外な人物であった。――
まあまあ良くできた映画だとは思う。しかし、植を演じる田村高廣がイマイチ。田村高廣は、良い俳優だとは思えないなあ。植の上司を演じていた山村聡は、さすがにうまく演じていたけれど。婦長(久我美子)に向かって、酔っぱらって「オールドミス!」と叫ぶところなどは面白い。