香山リカ『貧乏クジ世代』

香山リカ貧乏クジ世代 この時代に生まれて損をした!?』PHP新書、2006年1月
1970年代生まれ、特に「団塊ジュニア」と呼ばれる世代には、自分たちが「貧乏クジ」をひかされたという意識があるらしい。バブルに乗り遅れたし、不況による就職難であったり、年金問題のツケを払わされるかもしれないし…etc。楽しいことは終わった、もうこれから何もないという「祭のあと」のような空虚感と人生に対する諦観を持つ世代。そして、この世代には、自分に対する自信がないという劣等感や敗北感を抱いている特徴がある。どうして、この世代の人たちは、「貧乏クジ」を引かされたと身の不運を嘆き、負け犬のような劣等感に苛まれているのか。それに対して、どのような処方箋を与えたらよいのか。――
貧乏クジ世代」というネーミングに興味が引かれ読んだのだが、内容的にあまり深く分析がなされておらず、世代論あるいは社会論としてはやや苦しい。自己啓発系の本のひとつだと言えそう。
本書のなかで一つ興味深かったのが、「貧乏クジ世代」の法則の一つに「頑張っているとき以外は不安」があるという指摘だ。頑張っていることに対しては自信があるが、それが「内面的な揺るぎない自信」へと繋がっていかない。

学生時代には競争を強いられ、バブルがはじけたころに社会人となった貧乏クジ世代は、つねに「頑張らないとたいへんなことになりますよ」と、半ば脅されるような努力を強要された。だから、その上の世代のような「頑張るなんてカッコ悪いよ」という、"泥臭い努力への抵抗"はもっていない。(p.88)

だが、頑張ったところで、彼らは社会や他人からなかなか認められない。頑張ってもそれに見合った評価や報酬は得られないが、「ただ、頑張っているその最中にだけ、「私だって頑張れる」という、きわめてささやかな実感と自信が味わえるのだろう」(p.88)というわけだ。したがって、「頑張る」ことがやめられない。要するに「頑張る」ことそれ自体が目的化してしまっているのだ。「頑張る」ことを「頑張る」という不毛なサイクルに陥っている。この指摘は、たしかにそうかもしれないと思う。

貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!? (PHP新書)

貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!? (PHP新書)