野村芳太郎『事件』

◆『事件』監督:野村芳太郎/原作:大岡昇平『事件』/1978年/松竹/138分
19歳の少年が殺人犯としてつかまる。そして彼の裁判が始まる。この裁判の過程がこの映画の物語となる。裁判を通じて「事件」の真相が明らかになっていく。裁判のなかで明らかになったのは、この少年が亡くなった女性とその妹と三角関係にあったということであった。つまり姉と妹がこの少年を奪い合っていたわけなのである。
姉と妹との三角関係というのも興味深い設定であったし、裁判官と検事と弁護士の3人のやり取りも充分に見応えがあった。こう書いて気がついたが、「事件」は三角関係が原因で起こるし、この物語の主要な舞台となる裁判所もまた裁判官、検事、弁護士の3つの関係で構成されている。この重なりは偶然ではなさそうだ。三という数字がこの物語の重要な主題なのだろう。