野村芳太郎『真夜中の招待状』

◆『真夜中の招待状』監督:野村芳太郎/原作:遠藤周作『闇の呼ぶ声』/1981年/松竹/125分
兄弟が次々と蒸発していく。やがて一番仲の良かった兄まで蒸発してしまい、ノイローゼに陥る樹生。樹生の婚約者圭子は、精神科医の会沢に相談し、樹生兄弟の失踪の謎を解き明かすサスペンス。
無駄のない物語を展開をしていて、監督の野村芳太郎は映画の職人だなと思う。謎めいた事件が起こり、それに男女の恋愛物語が加わり(ベッドシーンが必ずある!)、陰惨な過去が明るみになり事件が解決する――こういうふうに物語が形式化される。一つの商品としての物語を巧みに作る監督、それが野村芳太郎なのだろう。このこと自体、悪いことだとは思わない。この物語形式は、テレビのサスペンスドラマに受け継がれていくのだろうか。この映画を見ていて感じるのは、80年代あたりのサスペンスドラマに雰囲気が似ているなということだ。
それから、この映画の物語はサイコホラーにも成り得たのではないだろうか。精神分析や催眠術といったテーマをもっと強調していたら、黒沢清風の映画になったのかもしれない。そういう展開もまた面白かったかもしれない。