吉村公三郎『わが生涯のかゞやける日』

◆『わが生涯のかゞやける日』監督:吉村公三郎/1948年/松竹大船/101分
山口淑子森雅之滝沢修が出演。この3人が、物語の中心人物になる。3人ともすばらしい演技で魅力的。私は、はじめて山口淑子の出演している映画を見たのだが、なるほど日本人離れした顔立ちをしており、エキゾチックな雰囲気が非常によく出ている。大人気だった理由がよく分かった。
山口淑子も良かったが、この映画で特に目を引くのはやはり滝沢修だろう。もと博打打ちで、戦後の混乱に乗じて金儲けをしたやくざの親分を演じている。滝沢修の知的な雰囲気が、力ではなく頭脳で権力を握ってきた男という役にぴったりと当てはまっていた。ハリウッド映画に出て来そうな悪役の顔なのだ。山口淑子滝沢修の「日本人」らしくない雰囲気が、この映画を魅力的にしている。
そもそも、物語は「民衆」=「善」という図式的なもので、いかにも新藤兼人が書きそうな内容なのだが、このような退屈な物語を魅力的にしたのは、山口淑子滝沢修の演技があったからこそだと思う。『安城家の舞踏会』の老貴族を演じた滝沢修は好きではないが、この『わが生涯のかゞやける日』の滝沢修は素晴らしい。