西林克彦『わかったつもり』

◆西林克彦『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』光文社新書、2005年9月
文章理解の障害となるものに「わかったつもり」があるという。「わかった」というのは、わからない箇所がないと思う安定した状態なので、もうそれ以上、理解しようとしなくなってしまう。「わかった」と思うことが、より良く理解しようとする妨げになることを説く。
本書は、文脈が文章の理解では重要であること、文脈から私たちは部分部分の意味を引き出していることを説明する。つぎに「わかったつもり」とは、どのようなことか、いくつかのパターンを提示する。たとえば「全体の雰囲気」によって読み誤ってしまうことなど。そして、いかに「わかったつもり」の状態から脱出するかを最後に提案する。
結論的には、要するに「読み」には終りがないということだ。「わかった」と思っても、別の「わからなさ」を見つけることもある。「もっとよい読み」はいつでも存在するということだ。というわけで、私たちが文章を読むときは、いつも「わかったつもり」でしかないことは意識しておいたほうがよいのだろう。

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)