成瀬巳喜男『あにいもうと』

◆『あにいもうと』監督:成瀬巳喜男/1953年/大映/87分
原作は、室生犀星。出演は、京マチ子森雅之久我美子といった面々。京マチ子が、芸者か何かをしていて、学生と関係を持って妊娠した。その噂が町に広がって、この家族は不愉快な思いをする。
この家の父と兄は、いつも不機嫌なのが気になる。父は川がコンクリートで固められていくことに不満を持ち、昔の手下を相手に愚痴をこぼしてばかり。兄はやくざっぽく、仕事もせず、乱暴で口が悪い。そういうわけで、妹が妊娠して家に帰ってきたことを知り、激怒。妹を激しく罵り、家を追い出してしまう。その後、妹の相手という学生が家に謝罪に訪れたときも、兄はこっそりこの学生の後を追いかけて、言い掛かりをつけて殴ってしまう。
その後、妹が久しぶりに家に戻ってくる。兄はまた妹を罵り、二人は取っ組み合いの喧嘩を始めてしまう。まあ、しかし兄が妹を激しく罵り、家から追い出すのも、どうやら妹の立場を考えてのことらしい。こうして、妹は家を出て東京に行くことになる。
乱暴者の兄は、まだ救いようがあるが、もう一人の男の父が、なんともだらしがない。物語の最後で、妻がやっている小さな駄菓子屋のお金をこっそり盗んでいる場面がある。しかめっ面ばかりしているのだが、結局家族の問題には何の頼りにもならない。男はダメだなと思う。一方、母とその娘二人のほうが、人生に立ち向かっているという強さがあってよい。