原一男『極私的エロス・恋歌1974』

◆『極私的エロス・恋歌1974』監督:原一男/1974年/98分
この映画は『ゆきゆきて、神軍』と同じぐらいの衝撃力を持っている。この映画の主人公である武田美由紀も、奥崎謙三のように強烈な個性を持っているのだ。
かつて、原監督が3年間一緒に暮したという武田美由紀という女性を追いかける。映画を通して彼女との関係を繋いでいく。
この女性がかなり自立心が強い。それゆえに、人々との衝突も辞さない。映画の中でも、何度も喧嘩をするシーンが出てくる。撮影している原監督とも、激しい口論をしているのだ。冒頭場面における武田美由紀とその同居者すが子との喧嘩は、カメラが入ることで、人と人の関係が変化したことを提示している。カメラは透明な存在ではない。カメラもまた人間関係の一つの要素であることを明らかにしている。
この映画では、やはり二人の女性の出産シーンが衝撃的だった。武田美由紀は、前々から原監督に出産シーンを撮れと言っていた。そういうわけで、彼女は、原監督のアパートで自力で出産をする。それを撮影しているのだ。撮影をしている監督のほうがとまどって画面がピンぼけになってしまったというところが面白い。
関係の濃密さにただただ驚くばかり。