ジョージ・A・ロメロ『ランド・オブ・ザ・デッド』

◆『ランド・オブ・ザ・デッド』監督:ジョージ・A・ロメロ/2005年/アメリカ・カナダ・フランス/93分
ゾンビ映画と言えばロメロ監督ということで、さっそく見に行く。ゾンビが学習して成長していくというアイデアが面白い。
ゾンビとの闘いで、世界中の都市が壊滅されてしまった時点から物語は始まる。生き残った者たちの一部は、ゾンビから身を守るために、徹底的に警備された巨大ビルの都市に住んでいる。その一方で、そこに入れない貧しい人々もいるというわけで、単純に人間対ゾンビだけではなく、人間の世界にも階級対立を設けるという工夫がしてある。この都市を支配している権力者をデニス・ホッパーが演じている。
面白かったのは、ゾンビが恐怖の対象だけではなく、人間の見世物になり娯楽の対象になっていたことだ。ゾンビまでも資本主義は飲み込み搾取してしまうのかと、笑ってしまう。ゾンビよりも恐ろしいのは、資本主義なのだろうか。
また、興味深い映像は、大勢のゾンビが崩壊した街のなかを歩いている姿である。高層ビルに挟まれた大通りをさまよい歩くゾンビの姿を、俯瞰で捉えた映像が2、3回挿入されていた。この都市に侵入する際、進化しつづけるゾンビが、それまで入ることが出来なかった川を渡るのだが、ここでもたくさんのゾンビが水中から上がってくる場面に興味を引かれる。
ここでは圧倒的な「数」が重要なのだ。つまりゾンビの襲来が主題なのではなく、その荒唐無稽といえるほどのゾンビの人数の多さが、この映画のスペクタクルとなる。「数」のスペクタクルというわけだ。未見だが、たとえば『妖怪大戦争』の宣伝では、妖怪の数「120万匹」ということが謳われていたが、この宣伝を見る限り、この映画も「数」のスペクタクルを目指したものではないかと想像してみる。恐怖映画とは、こうして物量勝負になっていくのではないだろうか。