ガストン・バシュラール『夢想の詩学』

ガストン・バシュラール(及川馥訳)『夢想の詩学ちくま学芸文庫、2004年12月
バシュラールの本は、いつも一回では何を論じているのか理解できない。ぼんやりとした理解しかできないのだけど、時間が経つとじわじわと気になる箇所が出てくる。夢やイマージュだの、それこそ主観/客観で言えば、主観の領域にあるものたちを題材にしているからだろう。
この本も夢とはちがう「夢想」を論じる。その際、ユングのアニマとアニムスという概念を援用する。「夢想の詩学とはアニマの詩学」(p.107)だという。このあたりの論の内容を、私はまだはっきりと理解していないので、なんとも言えないが、バシュラールが言うには読書にはアニムスの読書とアニマの読書という二つがあるという。本書で追求するのは、そのうちアニマの読書であるのだが、アニムスが注意深い読書であるとすれば、アニマの読書はもっと気楽で散文的な読書ということになるのだろうか。

アニムスは少ししか読まぬ。アニマは多くを読む。(p.112)

この本のなかでは、バシュラールの読書への愛情が時折垣間見られて、非常に興味深い。読書好き、本好きのバシュラール。書斎で、あるいは図書館で、一冊の本を手に取り読み始める。そこからバシュラールは、宇宙大に広がる世界へと入っていく。バシュラールの読書とは、そういうものらしい。そのような読書の幸福をバシュラールは語る。

夢想の詩学 (ちくま学芸文庫)

夢想の詩学 (ちくま学芸文庫)