海老坂武『サルトル』

◆海老坂武『サルトル−「人間」の思想の可能性−』岩波新書、2005年5月
20世紀を代表する思想家サルトル。そのサルトルは、1905年6月21日にパリで生れた。したがって、今年2005年はサルトルの生誕100年の年にあたる。どうやら、フランスでは今年はサルトル関連のイベントがたくさんあるらしい。関連本もきっと出るのだろうなあ。日本でもサルトル関連の研究書とか出るのだろうか。
本書は、サルトルの入門書かなと気軽に読み始めたのだけど、その予測は大きく外れた。これは入門書ではない。ある程度サルトルの著作に慣れ親しんでいないと、けっこうついて行くのが難しいかもしれない。
副題通り、サルトルの思想や活動を<人間の思想>と著者は最後にまとめている。ヒューマニズムにせよ、アンチ・ヒューマニズムにせよ、サルトルは一貫して「人間」について思考しつづけた思想家であるということだ。

重要なのは、人間が見失われようとしている時代に、彼が人間とは何かを問い続けてきたことだ。人間と世界、人間と人間、社会と社会、人間と歴史、その関係を考え続けてきたことだ。とりわけ、人間の物化、非人間性はどこから来るのかを、人間は人間以下の存在から抜けだせるかどうかを考え続けてきたことだ。(p.183)

構造主義や、その後の思想の流れのなかで「人間中心主義」の思想は批判にさらされてきたわけだけど、結局はまた「人間」へと思想は戻っていくのかなあと思う。「人間中心主義」で批判された「人間」とは別の形での「人間」の思想。こういう思想が現れるのかどうか。その時、再びサルトルの思想に可能性を見出すことができるのだろうか。

サルトル―「人間」の思想の可能性 (岩波新書 新赤版 (948))

サルトル―「人間」の思想の可能性 (岩波新書 新赤版 (948))