四方田犬彦『ソウルの風景』

四方田犬彦『ソウルの風景』岩波新書
以下の文章は、研究のためのメモ。

こうした国民性というものは、あたかも先験的にそれぞれの民族に与えられているように語られるが、実際のところさまざま歴史的要因が作用することによって成立したものに他ならない。それは地政論的な布置が変化するならば、容易に変化をする可能性をもっている。(pp.203-204)

そもそも国民性という観念自体が国家によって居住民を統合馴致するさいに用いられてきたイデオロギー的なものであり、われわれはこうした擬制が作り出してゆくステレオタイプの日本人観、韓国人観を機会あるたびに相対化してゆくことで、現実に隣人として存在している他者と向き合ってゆくしかないのである。(p.205)