仲正昌樹『デリダの遺言』

仲正昌樹デリダの遺言』双風舎、2005年10月
本書で批判される「生き生き」志向には同意。とはいえ、実は私自身もどちらかといえば「生き生き」さを求めるタイプなので、本書を読むのはつらかった。
私は、正直に言って、「生き生きした現実」を知らないというコンプレックスを持っている。よく「院生なんて世間知らずだからなあ、使いものにならん」と達観したことを言う人がいるが、「そういうお前はどれほど「世間」を知っているんだ」と言いたくなる。だから、他人にそう言われたくないがために、躍起になって「生き生きした現実」を手に入れなくては! と思っていたのだ。しかし、本書のおかげで、「生き生きした現実」を知らなくても、別にコンプレックスを抱く必要はなさそうだ、というか人文系の学問なんて、どうやっても「生き生き」しないのだから、それを認めるしかない。これからは、無理に「生き生き」しようと考えないようにしよう。

デリダの遺言―「生き生き」とした思想を語る死者へ

デリダの遺言―「生き生き」とした思想を語る死者へ