キム・ソンジュン『連理の枝』

◆『連理の枝』監督:キム・ソンジュン/2006年/韓国/108分
病によって恋人を失ってしまうという典型的なメロドラマなのだが、予想外な物語の展開を見せてくれておもしろかった。愛した人が不治の病であったというのは、通俗的メロドラマのごく普通のパターンではあるが、この映画はさらにもう一つ隠し球を入れているのがポイント。その隠し球が、はたして効果的であったかどうかはやや疑問が残るが、しかし興味深いシナリオだと思う。
結局、この物語では、真実が遅れてやってくるわけで、時間差が愛と哀しみを強調することになる。最終的に目指されるのはズレの解消であるわけで、つまりズレが消滅し、過去と現在が一致することなのだ。その象徴が、二つの木の枝が絡み合って一本の木にのように見える「連理の枝」だといえる。そしてなによりラストシーンでは、本来過去に属している人間と現在に属している人間が、同一画面に存在していることに注目すべきだろう。つまりズレが映像では一致してしまうことによって永遠の愛を示すわけだが、それは同時に亡くなった恋人の不在をも強調することになるだろう。