本田由紀『若者と仕事』

本田由紀『若者と仕事 「学校経由の就職」を越えて』東京大学出版会、2005年4月
本書は、教育から仕事への移行がどのような形で行われ、そこでは何が問題になっているのかを分析する。日本の社会では、「学校経由の就職」が支配的で、この慣行が高度経済成長を支え80年代まで力をもってきたが、90年代以降、この「学校経由の就職」がうまく機能しなくなってきたという。「学校経由の就職」の影で、疎かにされてきたものが、「教育の職業的意義(レリバンス)だった。そこで、本書は「教育の就職的意義」に注目し、「学校経由の就職」が機能しにくくなった今こそ、「教育の就職的意義」を回復させる必要があると主張される。
大学院まで出てしまった私にとって、自分が受けてきた教育が仕事をする際に尊重されるという状況はたしかに望ましい。苦労して身につけた知識なのに、「そんなものは仕事に役立たないよ」と言われるのは本当に悲しいことだ。したがって、「「職業的意義」については、教育内容の改善だけでなく、仕事という社会的領域の側が、教育の提供するさまざまな知識やスキル等をより尊重するような体制へと変革されることが不可欠である」(p.203)ということにまったく同意なのだが、とはいえ現実を考えると無理なのかなと弱気になってしまう。専門性がなくても就職には苦労するが、専門性が高すぎてもまた就職に苦労するのだと思う(誤解かもしれないが)。

若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて

若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて