山中貞雄『河内山宗俊』

◆『河内山宗俊』監督:山中貞雄/1936年/日活京都=太秦發聲作品/82分
この作品も傑作といえば傑作だが、私は『丹下左膳余話』のほうが良かったと思う。しかし、この作品が重要なのは、当時16歳という原節子が出演していることだろう。顔など、戦後の作品で見慣れている原節子とほとんど変わらないのに驚いた。ちょっと感動的だった。
この作品も、『丹下左膳余話』のようにユーモア溢れる作品に仕上がっているのだが、最後の河内山宗俊たちがやくざの一家に討たれていくところは、悲愴感の漂う場面になっている。原節子演じるヒロインのお浪を救うために、二人の男が大勢の敵に立ち向かっていく。この無数の刀に刺されても、なおも必死で守る河内山宗俊の姿がかっこいい。難を言えば、ラストシーンに至るまで、ややだらだらした印象を受ける。『丹下左膳余話』の時のようなテンポの良さがなかったように思えた。