岡野宏文・豊崎由美『百年の誤読』

岡野宏文豊崎由美『百年の誤読』ぴあ、2004年11月
とてつもなく面白い。今年読んだ本で、ベストワンだと思う。ほんとに声を出して大笑いをしながら読んだ。
過去百年間の話題作、ベストセラーに二人が突っ込んでいくのだけど、このツッコミがおかしくてたまらない。たとえば、こんな感じ。リチャード・バックの『かもめのジョナサン』を取り上げたところで、訳者の五木寛之について――。

岡崎 どう読んでも、好きじゃないんだよ、五木さん、この本。なのに翻訳と解説。
豊崎 お金だね(笑)。(p.272)

「お金だね(笑)」って、そのまま。あまりにストレートに突っ込むのでもうゲラゲラ笑ってしまった。
でも、けっして本を貶めるだけではないのがいい。名作とか古典だと思われる本でも、よく読んでみるとおかしなところがいっぱいある、ということを教えてくれる。それが本を読むことの楽しさなのだ。

そこが文芸ってジャンルの面白いところで、どんな古典でも、文芸関係のお偉いさんの評価をありがたがったりせず、まっさらな眼で読み直せばけっこう笑えたりするんです。(p.125)

この豊崎の言葉は良い。ほんと、その通りだと思う。本を読んでいて、苦しくなったらこの言葉を思い出したい。とにかく、この二人にかかるとどんな本でも、面白い箇所、笑える箇所が出て来る。この二人の才能というか、ライターとしての芸というか、そんなものを見せつけられた。売れる批評とはこういう本のことなんだ、ということを学んだ。とても良い本だった。
読書好きな人は、当然読むべき!。また読書が退屈だなあと感じる人にもおすすめ!!。

百年の誤読

百年の誤読