3という数字

斎藤孝『原稿用紙10枚を書く力』大和書房
文章を書くための方法についての本を、また買ってしまった。どうしたら良い文章が書けるのか、その方法を知りたいというのもあるのだけど、ほかに他の人がどんな方法で文章や論文を書いているのかということがすごく気になるのだ。特に、売れっ子の作家や評論家が文章を書くために、日々どんなことをしているのかがとても気になって仕方がない。そして、影響を受けやすい私は、すぐにその方法を取り入れたりしてしまうのだけど…。
斎藤孝といえば、音読ともうひとつは3色ボールペンだ。この本も、これらのテクニックを使った文章法を説明している。とりわけ、3という数字は、長い文章を書くときの土台となるものである。
長い文章を書くとき、やみくもに書き始めても途中で必ず挫折してしまう。書く前に準備が必要となるわけだが、ここでは3つのキーコンセプトを用意するとよいらしい。なぜ3つなのか。
二つだと、なかなかオリジナリティを出すのはむずかしい。しかし、3つのキーを組み合わせて、そこから何か共通したコンセプトが引き出せるとおもしろいものが出て来るという。この時、類似した内容を3つ組み合わせるよりも、できるだけそれぞれに距離があるものを組み合わせ他方がよい。一見、共通性のないものに、繋がりを見出す。ここに書き手独自の視線が生れるからだ。
このアイデアは、たしかに使える。自分のことを省みると、論文を書くとき、つい同じ内容の材料を組み合わせて使うことが多い。どうりで、単純で底の浅い考えしか出てこなかったはずだ。簡単に繋がるものを組み合わせてみても提示しても、読者にインパクトを与えるのは難しい。
これはいろいろな場面で使えるという。たとえば、書評を書くときにも、自分が読んだ本で気になった箇所を3つ取りだして、それぞれに自分の考えを書き、その3つをいかにしたら繋げられるかを考えるだけでも、長い文章が書けると述べている。なるほど!
それからこの原稿用紙10枚を書く力という点にちょっと引かれた。大学に入った頃、10枚のレポートを書くのにどれほど苦労したことか。そんなに長い文章をどうやって書いたらいいのか分からず、やみくもに原稿用紙に字を埋めていったことを思い出した。たしかに10枚は大きな壁だ。実は、今でも壁だ。しかし、目下のところ私の本当の壁は、原稿用紙50枚だったりする。
斎藤孝は、たくさん論文を書くことで、10枚の壁を越え、文章法も体得していったようだ。やっぱり、研究者はたくさん論文を書かないとダメですな。

原稿用紙10枚を書く力

原稿用紙10枚を書く力