否定から肯定へ

蓮實重彦『表層批評宣言』ちくま文庫
昔読んだものを再読。ずっと前に読んだ当時は、まだ批評や思想などに全然触れたこともなかったのに、いきなりこんな本を読んでしまって、まるで異星の言語を読んでいるような気分を味わったことを思い出す。今回は、そこまでひどく理解できないということはなかったけど、それでも簡単には読めないなあ。言っていることは、他の蓮實本と同じで(たとえば『物語批判序説』とか)なんだかんだ言っているけど、どいつもこいつも「制度」(=「物語」)内にとらわれて、その中で批評をしているだけではないか、ということだ。
「制度」内で語っている、と言われると私など「凡庸」な思考ばかりする人間にはちょっと(いやかなり)痛い。私も日記で、いろいろ他人の批判らしきことをつい書いたりするけど、その批判そのものが紋切型だったりする。後から気が付いて、なんて自分はダサいのだろうと恥ずかしくなったりするわけだけど。
結局どうすればいいのか、ということが問われるわけだけど、蓮實的にはひたすら「肯定」せよ、「表層」しかないことを自覚せよ、ということになるだろうか。深さや距離をねつ造して、それらしき物語(あるいは風景)に収まることに対して、「批評」とは「「作品」を風景に対する荒唐無稽な過剰として機能させ、風景を崩壊へと導く読み方にほかならない(p.227)」というわけだ。
「〜がない」「〜が書かれていない」という否定的な批判ではなくて、「ここにも〜がある」「あそこに〜が書かれている」というような肯定的な批評をすることを目指そうと決意する。そんなテクニックを身につけたい。

表層批評宣言 (ちくま文庫)

表層批評宣言 (ちくま文庫)