昔を振り返るにはまだ若い

四方田犬彦『ハイスクール1968』新潮社
全共闘の時代の高校生を描く。この時代に受けた経験が、四方田氏の批評における原点となっているようだ。1人の高校生の挫折の物語とも読める。また、当時の映画や音楽、漫画について多く語られていて、サブカルチャーについての本としても面白い。
この本が60年代末から70年代への転換期を描いて、たとえば坪内祐三には『一九七二』という本があって(まだ読んでいないけど)、そして大塚英志の『「おたく」の精神史』で80年代が論じられ、これらを読み通すと戦後史を読むことになるのだろうなあと思う。どうしてここに来て、自分の精神的原点を描き出す著作が現れたのか。みんな昔を振り返るにはまだ若いと思うのだけど。