自分のことが分からない

昔、学部を卒業するとき、ちょっとだけ就職活動をしてみた。こんな経験もしておこうかなと思って。で、その時、どうやって活動するものなのか全く分からなかったので、本屋に行って何冊かいわゆるマニュアル本を買って勉強してみた。
この時、やっぱり大きな問題になったのは、自分のことをいかに説明かということだ。おそらく誰でも自分のことを説明するのは難しいとかんじるのかもしれない。私は、自分自身について語るというのは今でもどんな問題よりも難しい。
それはどうしてなんだろう?まず、そもそも自分のことを他人に語るのが照れくさいというのがある。それから、私が感じた自分のことを語ることの難しさを挙げてみると、それは自分の中に「これ!」という特徴を見つけることが難しいということだ。何を取り出してみても、どうも「これこそ自分だ」というものにならないのだ。いったい自分というのは何者なんだ?といつも思う。
自分を語ることが苦手な私としては、自分のことを語ることで本を書く人がうらやましい。というかそんな人たちに対して私はルサンチマンを覚える。本屋に行けばよく置いてある、たとえば不良から更生して成功をつかんだとか…。あとトラウマを語る人たちとか…。どうしてみんな自分で自分自身のことを理解できるのだろう?私にとって一番理解不能な他者とは、まさしく自分自身にほかならない、と思う。だから、自分のことを何の躊躇もなくすらすらと語る人に違和感を覚える。本当は、自分のことを語れと言われたら、口ごもるものではないか。自分が自分のことを一番よく理解しているのだ、というのは一種の傲慢さの現れではないだろうか?