講義で、『裸足の1500マイル』というオーストラリアを舞台にした映画を見る。かつて1970年ごろまで、オーストラリアでは優生思想に基づいていたと思われる、混血児の隔離政策があった。白人とアボリジニとの間にできた子どもを無理矢理アボリジニの母親から引き離して、白人の生活をさせ、やがて白人と結婚し子どもを作ることで、だんだんとアボリジニの血を絶やしてしまおう、という政策と言って良い。
実話らしいのだが、映画それ自体に関心のある私としては、こうしたテーマ自体を論じることには興味がない。興味を引いたのは、この撮影監督がクリストファー・ドイルということである。
クリストファー・ドイルがオーストラリア出身ということで、撮影したのかなあと思うのだけど、印象としては完全にオーストラリアの自然に負けているなあと思う。クリストファー・ドイルといえば、香港映画などで大活躍していて、特に香港のような都市を撮影させると見事な映像を撮っていた。あのスタイリッシュな映像にワクワクしていたのだが、『裸足の1500マイル』では、それが通用しない。オーストラリアの自然の風景が、単なる絵葉書的な平凡なものとしか感じられなかった。都市を撮ったテクニックが、オーストラリアの自然には全く役に立たなかったのではないか。したがって、映画としてもまったく退屈な作品としか思えなかった。

今日はもう一つ書きたいことがあるのだけど、長くなったのでまた今度にしよう。