◆永井荷風『江戸芸術論』岩波文庫

『江戸芸術論』は、荷風が江戸文化をいかに読んだのか分かる。江戸の芸術や文化を「平民」という言葉で説明している、というのが本書の重要なところ。このあたりに、反=近代という荷風の姿が出ていると思う。もう一つは、このような見方を荷風がするのはなにより留学体験が大きいということが大切。留学や海外の浮世絵論などを通して、江戸文化を見ていて、そのことにより、江戸文化を相対化することが可能になり、江戸文化にしか見られないない特質を守るべきなのだ、という主張になっていく。