見田宗介『現代日本の心情と論理』

見田宗介現代日本の心情と論理』筑摩書房、1971年5月
図書館で見つけて、たまには古い本でも読もうと借りてみた。主に、1960年代後半(65年から69年)に書かれた文章を集めてある。論文というか時評というか、両者の中間といった感じ。テーマは、労働、メディア(サブカルチャー)、自我といったところが取り上げられている。労働についての分析を読んでいると、勝ち組、負け組の二極化はこの頃からすでに現れていたのだということが分かる。今に始まったことではなかったのか。
メディアではベストセラーについての分析が面白かった。
自我のテーマでは、たとえば「失われた言葉を求めて」という論文が興味深い。これは当時の学生の精神風景を描き出したもの。当時は学生運動が盛んな時期だし、その学生たちの精神状況を知ることができた。帰属することを拒否し、<参加>や<連帯>によって<自立>を求めるが、<連帯>への不信が<孤立>へと陥っていく。このように学生たちの精神状況をまとめていた。

J・ウルフ『ノージック』

◆J・ウルフ(森村進森村たまき訳)『ノージック 所有・正義・最小国家勁草書房、1994年7月
これは比較的読みやすい本。以前、ウルフの『政治哲学入門』を読んだけど、こちらも読みやすかった記憶がある。翻訳が良いのか、ウルフの書き方が良いのか。本書には、訳者の長文の解説(というよりノージック論)が付いている。これも読んでおいて損はしない。
ウルフは、ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』を批判的に検討する。全体を通して、ノージックの論には否定的だ。本書では、権利論、(最小)国家擁護論、権原理論を主に分析していたが、いずれもノージックは我々の説得に失敗していると結論していた。なかなか手厳しい読み手だと思う。
また、『アナーキー・国家・ユートピア』を読みたくなってきた。

ノージック―所有・正義・最小国家

ノージック―所有・正義・最小国家