有田正光・石村多門『ウンコに学べ!』

◆有田正光・石村多門『ウンコに学べ!』ちくま新書、2001年10月
以前、谷崎の小説を集中して読んでいた頃から気になるテーマに「ウンコ」があった。文学のなかではたして「ウンコ」がどのような意味を持ってきたのかについて考えるのは、かなり重要なことなのではないか。いや、「ウンコ」は何も文学だけの問題ではなく、倫理学や哲学的な問題にも繋がるではないか――と、そのようなことを漠然と考えている。まるで小学生が思いつくようなテーマだが、「ウンコ」を馬鹿にしてはいけない。
というわけで、その研究のための参考になればと本書を読み始めた。環境倫理の立場からの研究ではあるが、谷崎をはじめとした「ウンコ」の文学にも触れられている。また「ウンコ」の文化史も興味深い。本書は「ウンコ」研究にとって必読の書と言える。
本書で何より共感したところは、「みんなのおかげでウンコができる」という考え方である。私も「ウンコ」は秘匿すべき個人的な行為ではなく、すぐれて社会的な行為であると考えており、私たちの「社会」を考える際に「ウンコ」はよいテーマになるはずだと思う。「今や便器にまたがれば、自分がしたものの姿形を見ぬうちに流れてしまうことも可能だから、自分がウンコをしたことさえ身に覚えがないと知らばっくれたりできそうにも思われる。が、しかし、ウンコのほうは、いつもあなたに「俺はお前がひりだしたウンコなんだぞ」と人知れず語りかけているのである」(p.8)と本書は述べているが、まさしく「ウンコ」こそ、私たちの姿を写しだす鏡だと言えるだろう。

ウンコに学べ! (ちくま新書)

ウンコに学べ! (ちくま新書)