ソフィア・コッポラ『ロスト・イン・トランスレーション』

◆『ロスト・イン・トランスレーション』監督:ソフィア・コッポラ/2003年/アメリカ/102分
「東京」を舞台にしているというので見に行った。とりたてて難解な映画ではないけれど、あまり面白い映画だとは思わなかった。
異国である東京に仕事でやってきて、異国での滞在ゆえの違和感から孤独感、疎外感を覚えた映画俳優と、やはり同様の孤独にある一人の女性が出会い、恋愛のような関係に陥る。物語はそんなところだろう。
映画の舞台になっている「東京」に違和感を覚えたとか、訳の分からない友人たちと遊んでいるシーンは、なぜか無国籍風というかボーダーレスな空間と言えばいいのか、ちょっとした異空間を作り出していて興味深かったとか、そんなことを感じた。しかし、こうした映画に対する感想は、どうしても紋切り型になってしまう。
映画は、結局誰かの視線から物事を見なければいけないわけで、その誰かは何らかの個性を持っているはずなのだ。だから、映画で描かれる都市の風景に、観客である私が違和感を覚えるのは当然のことだ。その違和感をもって、この映画の「東京」の描かれ方はおかしいとか批判してもあまり生産的ではないような気がする。他者の視線と私の視線が、まったく同じであることなどない。違いがあるのは当然だと思う。正しいとか間違っているというのは問題ではないのだろう。