ちょっと調べる時に便利かもしれない

貫成人『哲学マップ』ちくま新書
内容は難しくないので、すぐに読み終える。特に、これ!といった特徴のない本だけど、哲学史上で特に有名な人物はだいたい取り上げられているので、「あの哲学者の思想って、どんな感じ?」という時に、さっと調べるのに便利かもしれない。ちょっと哲学の勉強をした人には、必要がない本だと思う。
この本の内容とは、直接関係がないけれど、個人的に気になった箇所をメモしておく。
近代の哲学を特徴づけるものに「自己同一性」「同一性」ということがしばしば指摘される。

さもなければ、近代の制度や思考法が同一の自我を前提として作られ、そのすべての概念ネットワークが「主観性の形而上学」をもとにしているために、ひとびとは自我という概念にみあう実体を見いださなければならないという強迫にかられるのかもしれない。自我の同一性が近代的諸制度の「蝶番」(ウィトゲンシュタイン)になっているため、それを根拠づけれなければ近代そのものが立ち行かないからだ。(p.226)

このへんは、ポストモダニズムの文脈で「同一性」批判論じられていることだと思う。
自我の同一性が破れていて、自我が分裂していたら、アカデミックな世界で論文が書けるのだろうか?と思う。書いている内容が、支離滅裂、矛盾だらけの論文は、はたしてアカデミズムの世界で認められるのか。ということが、ちょっと気になる。