関西の詩壇に興味を持つ

南陀楼綾繁『ナンダロウアヤシゲな日々』無明舎出版
とにかく「本」が好きだ、という人には楽しめる。ミニコミの世界を知ったり、コレクターの世界を知ったり。趣味の世界ってすばらしい。自分の知りたいことを調べ、欲しいものを集め、書きたいことを書く。そんな生活に憧れる。趣味だからこそ、とことん突き詰めることができるのだろうなあ。大学の学問より、市井の学問のほうが良い。
この本のなかで、杉山平一『戦後関西詩壇回想』という本が紹介されていた。けっこう面白そうな内容らしい。
関西で活動した詩人たちの肖像を描いたものらしく、たとえば伊東静雄安西冬衛小野十三郎竹中郁足立巻一北川冬彦らが出てくるという。このへんの詩人は、私自身、時折調べたりすることもあるので、興味を引く。関西モダニズム関係を調べるのにも役立ちそう。
それから、大阪の<創元>茶房(出版社の創元社が経営する書店の奥にあった喫茶店)から生れた詩誌が「詩文化」であること。この喫茶店には、大阪の文学者が集まっていたことなど、覚えておくと役立ちそうな情報だ。(林哲夫『喫茶店の時代』を参照すること!)
この<創元>には、三好達治も顔を出している。この三好達治の話が面白い。三好は、いつもお金の困っていた。なので、随筆集の『夜沈々』は、「家賃、家賃」。『風粛々』は、「カネ少々」をもじったものらしい。さすが詩人だ、と感心してしまう。そんな三好らしいエピソード。詩の値打ちが一般雑誌の編集者に分かるか、詩の値打ちが分かるのは作者自身だと、作品と一緒に金額を書いた請求書まで届いたという。すごいな。これぐらい図々しくないと詩人なんて生きていけないよなあ。おもしろすぎる。こういう知識って好きだなあ。