蟻二郎『フォークナーの小説群』

蟻二郎『フォークナーの小説群』南雲堂
この本は、中上健次が読んでいたと言われている。というわけで、ここに論じられているフォークナー像が、中上になんらかの影響を与えたのは明らかだろう。柳田国男と絡ませて論じるあたり、変わった本で面白いのだけど、けっこう読むのは大変だ。「噂」というものを鍵として、フォークナーの小説の語りをヨーロッパの小説の「個」の語りとは異なる、ある意味未分化の共同体の語りと分析するあたりに、この論の大胆さを見た。