フォークナー『熊 他三編』、塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代』

◆フォークナー『熊 他三編』岩波文庫
塚原史『ダダ・シュルレアリスムの時代』ちくま学芸文庫
フォークナーの短篇に挑戦してみたけれど、なかなか渋い小説が多い。長篇とは違った魅力がある。なんとなく、ヘミングウェイのような雰囲気と言ったらよいのだろうか。そんな「男」の小説に近いのかなあと思った。

「たぶん、だよ」とミスター・アーネストは言った。「わしらの言葉の中ではこれが最上のものだ、これが最上だよ。このたぶんこそ人間をここまで生きつづけさせたものなんだ。人の一生のうちで最上の日々というのは、きっととか必ずとか言って過ごす日々ではないのさ。人にとって最上の日々というのは、たぶんとしか言えぬような日々なんだ。きっとするなんて言葉はあとになって言えることだ。なぜって人はそうできるかどうかそれまでは分からんのだし、それまでは本当にそうしたいかどうか分からんのだから……食事小屋へ行って、ウイスキーを持っておいで。それから夕食の支度にかかろう。」(「朝の追跡」)

この箇所が一番のお気に入り。自分の日記を読み返すと、「必ず」とかいう似たような言い回しを頻繁に使ってしまう。それだけ、追いつめられているのは確かなんだけど、この状態はたしかに「最上の日々」ではないなあと。ああ、はやく「たぶん」と堂々と言えるような生活を送れるようになりたいものだ。