◆『28日後…』
監督がダニー・ボイルということなので、見逃せない映画だ。物語は、血と唾液で感染するウィルス。感染すると「凶暴性」が増す。そして、あっという間に世界は壊滅してしまう。街は、ウィルスに感染した人々がたくさんいて、主人公たちを襲ってくるというのは、ゾンビ映画のようである。しかし、奇妙なのは、物語の後半になるにつれて、こうしたモンスターの影が潜む。モンスターに襲われる恐怖は薄れてしまう。
その代わりに、生き残ったものたちの争いがメインになってしまう。ここで、主題はウィルスに感染する恐怖ではなく、人間の内なる凶暴性の恐怖へと変わる。これは、ゾンビ映画というものを巧みに換骨奪胎した映画なのではないか。というのも、ゾンビ映画だったならば、おそらく主人公たちがウィルスに感染した人を殺すのにためらいを覚えるはずがない。おまけに、この映画を見て思いつくのは、コッポラの『地獄の黙示録』で、主題の変化もこのあたりが影響しているのではないか、とも思える。しかしながら、ダニー・ボイル自身、もともとこうした「仲間内での争い」を描く監督でもあることも忘れてはならない。
この映画は、本編とは別の結末が用意されている。要は、ハッピーエンディングにするかアンハッピーエンディングかの違いといったところか。本編では、未来に希望を残すハッピーエンディングが採用されたが、別ヴァージョンの結末も興味深い。別ヴァージョンの結末だったならば、また別の物語の意味が解釈できる。