岩田規久男『日本経済を学ぶ』
◆岩田規久男『日本経済を学ぶ』ちくま新書、2005年1月
これは非常に分かりやすい本だった。この本を読んでみたのは、『不安型ナショナリズムの時代』の内容がどうなのか知るため、つまり高度成長をもたらした開発主義について、経済学ではどのように説明されているのかを確認するためである。
本書で、このことに関連するのは、第5章の産業政策と規制改革を論じたところだろう。この章を読むと、「旧通産省の「産業政策」は「戦後の経済成長に貢献した」という「通念」は誤解だと言われている。むしろ、通念とは逆に「旧通産省の『産業政策』が有効でなかったことが、製造業の競争を制限することなく、生産性向上や新製品の開拓などをもたらし、高度経済成長に貢献した」と考えられるという(p.154)。
となると、たしかに『不安型ナショナリズムの時代』の内容は怪しくなってくる。韓国と中国に関しては分からないが、少なくとも日本においては、開発主義があって高度成長が起きたとするのは誤解なわけで、これが日韓中に共通する点であるという議論の前提が崩れてしまう。
- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 新書
- 購入: 11人 クリック: 127回
- この商品を含むブログ (74件) を見る