ジョナサン・ウルフ『政治哲学入門』

◆ジョナサン・ウルフ(坂本知宏訳)『政治哲学入門』晃洋書房、2000年6月
文字通り、政治哲学の入門書だった。本書は、序論を省くと全部で6章ある。それらを順に並べてみると、「1 自然状態」「2 国家を正当化する」「3 誰が支配すべきか」「4 自由の位置」「5 財産の配分」そして、最後に「6 個人主義、正義、フェミニズム」となる。
はじめの5つが、政治哲学の基本テーマなのだろう。本書の特徴は、基本テーマを論じたあとに、フェミニズムの問題を取り上げていることだ。フェミニズムを取り上げる理由として、「リベラルな個人主義の限界」のケース・スタディになるからだという(p.239)。現代の政治哲学は、「リベラルな個人主義の限界」について、さまざまな立場から議論されているという。だが、もっとも生き生きとした論争が、フェミニズムの政治哲学の内部で生じつつあると、著者は注意を促している。訳者があとがきで、本書はバランスがよいと評価しているが、たしかに本書は目配りが行き届いている印象を受けた。有益な本だと思う。

政治哲学入門

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