◆戸田山和久『知識の哲学』産業図書
『論文の教室』の著者である戸田山氏の本だが、この本も『論文の教室』同様に非常に分かりやすい文章で、そして適度に遊びも入っており、充分に楽しめるものだ。「知識の哲学」なんて、哲学の王道のようなもので、説明する人によっては頭が痛くなるような堅い議論ばかりが続いてしまう本になるのだろうけど、そこは適度に分かりやすい例を挿入して説明が為されるので、哲学の議論になれていない私でも最後まで飽きずに読み通すことができた。こういう本に出会うと、本当にうれしいものだ。
難解なものを難解に語るのは、それはそれで、ある程度の能力が必要なのだろうが、難解なものを易しく語るというのは、前者以上に困難で能力を要することだろうと思う。で、学問というのは、この両方の語りを必要とするのではないか、そんな印象をこの本から受ける。
