著作権を考える

◆岡本薫『著作権の考え方』岩波新書
著作権というのは、いったいどうなっているのか知りたくて読んでみた。著作権の解説とそれにまつわる諸問題を提示していて、とても勉強になる本だった。
この本によると、著作権の世界では「全員が不満」が「普通の状態」だと言う。権利者は、もちろんできるだけ多くの利用料がほしいところだし、一方消費者の側としてはできるだけお金は出さずに楽しみたいし。互いの利害を調整するのがなかなか難しい世界なんだ、ということが分かる。
著作権に関連するニュースとしては、最近、海外生産の音楽CDの逆輸入の問題が取り沙汰されている。文化庁の骨子によると、一定期間の輸入禁止にしようとするということらしいが、今後どうなることやら。
その「輸入権」の問題も、この本に少し書かれている。CDの輸出入の止められる権利すなわち「輸入権」は条約交渉でも何度も提案されているが、「絶対反対」の国がけっこうあると。
一つは、「途上国」であり、もう一つは、「比較的産業規模の小さい先進国」だという。
「途上国」は、安い労働力で正規のCDを生産してもそれを輸出できないとなれば困る。こうした「保護貿易」的なものは、先進国のわがままにしか映らないだろう。
「比較的産業規模の小さい先進国」では、たとえば北欧のフィンランドが例の挙げられている。フィンランドは、レコード産業がなく、全部アメリカから輸入しているという。もし「輸入権」があると、アメリカのレコード会社はフィンランドへのアメリカ製CDの輸入を全部ストップする。そして、フィンランド国内に子会社を作って、そこだけに輸入を許可する。他の輸入は認められないから、フィンランドはCDの値段が高くても買わざるを得なくなるという仕組み。これは「途上国」とは違って消費者側の不利益が生じるという。
こうなると、逆輸入問題はかなり深刻だと思う。だから、一定期間の禁止という、中途半端というか妥協的な案が出てきたのだろうなあと思う。
それにしても、他の産業とちがって、いわゆるコンテンツ産業に関してだけは、特別扱いしてしまうのはなぜなのだろう?というのは、自分自身への問いでもあって、私はどうしても文学をたとえば自動車産業と同じような産業とみなすことができない。なんていうのか、産業なのに、いやそうではない部分も文学は持っている、それは絶対に守らないといけないとも思ってしまう。文学の創造力というのは、物の生産とは異なるものなのではないか、という「神話」みたいなものを、きっと信じているのかもしれない。それこそ、文学の「魂」は守ろうというような…。