村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』

村上春樹神の子どもたちはみな踊る新潮文庫、2002年3月
6つの短篇で構成されている。神戸の地震が共通した主題となった連作小説であるが、それぞれ独立した作品としても読める。地震が、登場人物に直接的な被害をもたらすわけではない。ただ、たとえば家族が神戸にいるかもしれないとか、自分の出身地であったりとか、母親が救援活動に行っているとか、そのような形で地震とつながりをもっているだけだ。ある意味、主人公たちにとって、「遠い」できごとなのかもしれない。それにもかかわらず、地震は登場人物になんらかの影をもたらす。それは、どうして私はここに生きているのかという根源的な問いであろう。
こうした存在論的な問いと関連しているのか分からないが、「眠り」という主題が気になる。眠りは、闇に繋がるので恐怖をもたらすこともあるのだが、その一方で恐怖から回復するにも眠りが必要なのだと思う。眠りはもちろん夢と繋がる。また闇と光の対立という村上春樹の主要な主題は、眠りによって接続されていると言えばよいのだろうか。村上春樹文学における「眠り」、ひいては幻想文学における「眠り」の機能について調べる必要がありそうだ。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)